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映画『シン・ゴジラ』と東宝宣伝マンの矜持

公開前の情報の少なさと、公開後に世を席巻した圧倒的な熱量と拡散力。この夏、社会現象ともなった『シン・ゴジラ』の宣伝活動は、どんな発想で進められてきたのか?作品の類稀なる個性とヒットの宿命との狭間、その最前線で格闘した若きチームに話を聞いた。※このコンテンツは2016年に公開されたものです。

第3章:宣伝は若手が個人で戦える場。大変さを面白がれ!

若手社員が自らのアイデアで勝負することで、新しい宣伝にチャレンジした『シン・ゴジラ』。それを実現した東宝宣伝部のカルチャーとは?

——皆さんのような若手が『シン・ゴジラ』の宣伝をやっているのは意外なイメージもありますが、東宝の宣伝部には、若手が活躍できる文化があるということでしょうか。

大竹 今回は制作陣も若い人が多かったですよね。現場にも初めてゴジラに携わったという人がいました。

稲垣 若いと「ゴジラはこうでなければ」という固定観念がないのがいいですよね。また周りからも、「ゴジラはそうじゃない」という「あるべき論」でブレーキがかかるようなことはありませんでした。タイアップでも、ゴジラに耳をつけてみたり、網戸を持たせたり、自由にやらせてもらうことができた。たしかに東宝には、こうして若くても大作を任せていくところがありますね。若手もそういう経験を通じて度胸がついていく。

大竹 紙でも電波でも、パブリシティの仕事は結局1人で進めるしかない。新人でもベテランでもそこは同じです。任されるからやりがいがあるし、責任感は伴うけど面白い。むしろ若いからこそ新しい発想が生まれて、面白い宣伝ができるのではと思います。ワールドプレミアのとき、小宮君がドローンを使ってレッドカーペットを撮影したんですけど、今まで通りの宣伝のイメージで「だいたいこういうことをすればいい」という発想で向き合っていると、こういう新しい発想はなかなか出てこないですよね。

小宮 世の中的には、宣伝の仕事は広告代理店に依頼するものというイメージも強いと思うのですが、伝統的に社内でやるのが東宝。宣伝部は個人商店の集合みたいな部署で、裁量の幅も大きい。普通の会社ではあまりないことなのではと思います。

——映画以外の部門での経験が役に立っていると感じたことはありますか?

大竹 僕と小宮君が働いていた日比谷シャンテはショッピングモール。映画とは全く関係ないようにも思いますが、「誰のために仕事をしているのか」という視点が肝心ということは同じです。ショッピングに来てくれるお客さんのためにどうするかを考え、テナントさんとやり取りするのが日比谷シャンテの仕事なら、映画を観に来てくれるお客さんのためにどうするかを考え、媒体さんとやり取りするのが宣伝の仕事。日比谷シャンテの仕事を経験しておいてよかったと思いますね。

——そんな皆さんが、東宝に向いていると思う人、一緒に働きたいと思う人とはどんな人でしょうか?

稲垣 僕は入社するまで映画ってほとんど観ていなかったんです。就活中も東宝の志望者には映画オタクがいっぱいいて、なぜ自分が決まったのかと不思議に思ったくらい。でも、入社すれば「観なきゃ」と思うようになるし、それくらいでいいんじゃないかと思うんですよね。とくに宣伝部では、タイアップ先の企業や俳優さんの事務所、媒体などとの調整の仕事も多く、問われるのは知識よりもやはり人間力。「映画にすごく詳しくないから」と引いてしまうのは残念です。会社としては演劇や音楽も扱っているわけですし、何か1つでもエンタメが好きな気持ちがあれば十分やれると思います。

小宮 大学時代って自由な時間がたくさんある時期。その間「何もしていなかった」というのはとてももったいないと思うんです。僕はJリーグのクラブの応援が好きで全国を転々としていたんですが、そうやって何でもいいので興味のあることをとことんやればいいんじゃないでしょうか。とことんやった人というのは企業にとっても魅力的。僕自身もそういう「打ち込める人」と働きたいです。

大竹 僕が東宝を志望したのは、映画が好きということもありますが、社員全体の数が少ない分責任を負う仕事が多いと思ったから。東宝は宣伝に限らずどの部署でも同じですが、そういう環境だから独り立ちも早い。仕事をしていくうえで、その点は大きな魅力だと思います。また、エンタメの会社だけあって面白い人が多い。その印象は入社時も今も全く変わりません。めちゃくちゃ大変な仕事でも、ケンカをしながらでも、面白がってやれる。そういう人が多いと思うし、そういう人と一緒に仕事をしたいですね。