ROOKIES TALK

新人座談会

コロナ禍は日本社会に長く、大きな影響を与えている。
エンタテインメント業界が受けた影響もまさに未曾有の事態であった。
まさにコロナ禍の中、東宝に入社した3人の新入社員にそれぞれの想いを語ってもらった。

※このコンテンツは2020年に作成されたものであり、社員の所属部署は2020年当時のものです。

PROFILE

  • 演劇部 営業戦略グループ シアタークリエ 営業係

    R. M.

  • 映像本部 宣伝部 宣伝管理室

    T. A.

  • 管理本部 情報システム部 ITプロジェクト推進室

    M. F.

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就活から入社まで

を目指して東宝に?
コロナ禍発生と同時の入社に
不安はなかった?

M. F.

大学では建築を学んでいて、もちろんそれも面白かったのですが、就職活動をするときになって改めて何をしたいか考えたとき、やっぱり本当に好きなのは芸能やエンタテインメントだと思ったんですね。それで、受けるだけ受けてダメなら諦めようと、思い出づくりのつもりでエンタメ業界から1社だけ、東宝を受けてみたんです。もしここでダメなら、今頃は全く別の業界で働いていたと思います。

T. A.

僕は3年生になって、どこかのインターンシップに行こうと思ったとき、ただ話を聞くだけでなく充実した体験ができることが魅力で東宝のインターンシップに行ったんです。内容は、公開前作品を題材に自分なりに宣伝プランを作ってプレゼンするというもの。実際にプロデューサーからフィードバックをもらう体験はとても充実していて、その経験から東宝を志望するようになりました。
インターンシップに行ったから万全、ということは全然なかったんですけども。

R. M.

採用人数も少ないから、インターン参加したから大丈夫ってことはないんだよね。

T. A.

エンタメ業界に興味を持ったのは、大学時代に授業の一環で、サッカーの会場に人を呼ぶプロジェクトに取り組み、多くの人に喜んでもらった経験も影響しています。「何かをしかけて感動をつくる」というエンタテインメントの価値を感じることができ、「必須ではないけれど、日常を豊かにしてくれるもの」としてのエンタテインメントに興味を持ったんですね。

R. M.

私はテレビ局、エンタメ業界、旅行会社、酒造会社と、とにかく自分が好きなことに関わる業界を中心に活動していました。東宝については、学生時代にテレビ局でアルバイトをしていたときにプロデューサーの方の仕事を拝見する機会があり、その方の俳優さんへの接し方にとても好感が持てたこと、またOBOG訪問でお会いした方のフランクなお話ぶりに、会社としての温かさを感じたことなどが印象的でした。

T. A.

それは僕も思った。「いかにも業界」という感じがないんですよね。ニーズがあることには積極的に挑戦するけれどおごっていないという印象で、感じたのはやはり「温かさ」でした。その印象は入社してからも変わらず、分からないことがあってもためらわずに聞ける雰囲気に助けられています。

M. F.

コロナ禍による緊急事態宣言直前の入社で、エンタテインメント産業には大きな影響が出そうな状況ではありましたが、入社直後の役員からのレクチャーで、「東宝は不動産事業など映画以外にも様々なビジネスを展開していて、当面は問題ない」と聞いていたので、とくに心配はしませんでした。個人的にも、たしかに「映画館で映画を観ること」そのものは不要不急かもしれないけれど、家にいる中での映像コンテンツへの需要はむしろ高まっていると感じていたので、東宝にもきっとできることがあると思えて、気持ちとしては前向きでしたね。
何より、エンタテインメントの企業というのは、常に新しいことを発信し続ける人たちの集団。未曾有の事態に柔軟に対応できる会社に入れたことをかえって嬉しく思いました。

R. M.

私は現在、劇場勤務で、お客様に劇場に呼び戻す施策を考える立場なので、「本当にお客様が戻ってくるのだろうか」という点について不安はあります。でもその代わり、新しいことはいくらでもできる。コロナをきっかけに、今後どういう変化が起きていくのかなという意味ではむしろワクワクしています。

T. A.

同期はみんなポジティブだと思いますね!ステイホームで持て余した時間をどうするか、というときに、多くの人は何らかのエンタテインメントに触れていて、「エンタテインメントは決してなくならない」と僕自身も確信しています。
とくに配信サービスについては、コロナ前から劇場公開をせず配信のみの作品が登場するなど話題になりつつあり、映画会社も本格的に考える時期に来ていた流れが、コロナで一気に加速したという感じ。それを作れる環境にいるのだから、ぜひやっていきたいという思いになりました。

M. F.

新しいことがどんどん生まれていく中で、それを考えるのが我々エンタメ業界に求められることなのかも、と考えていました。コロナの打撃がどれくらい大きいのかというのは正直ピンと来ていなくて、だからこそ、いい方向を見るしかないと考えていたというのもあります。

いざ、リモート入社!

モート研修ってどんな感じ?
自宅ではどう過ごした?

T. A.

リモート研修は楽しかったですよ!3人ずつのチームに分かれ、『ゴジラ』をテーマに企画を考える、という課題があったんですけど、みんな分からないことだらけの中でも、いろいろ話し合って作り上げていくのはやっぱり楽しいと思ったし、盛り上がりました。ふと我に返ると家に一人なんですけど、そのことはあまり考えないようにしていましたね(笑)。

R. M.

3つのグルーブですごくいろんな案が出たし、他のグループの意見を聞くのが楽しかったですね。

T. A.

「リモートでも結構話し合えるもんだな」というのは発見でした。

R. M.

最初の1、2週間は、毎日一人ずつ好きなお題を出して、30分~1時間ほど、それについてみんなで話し合うという場が設けられていたのですが、私はその時間がとても貴重だったと思っています。通常の研修であれば、泊まりで関西まで研修に行ったり、研修後にみんなでご飯を食べにいって話をする時間があるのだと思うのですが、リモートでそういう機会がない分、研修の中に取り入れてくれていたんですね。

M. F.

「これからの映画館をどうするのか」みたいなテーマもあれば、「みんなで好きな『不朽の名作』を語る」なんていうテーマもありました。

T. A.

そして最後は「多様性とは何か」という話まで!(笑)

R. M.

最初は「下手なことは言えない」という雰囲気もあったんですけど、繰り返すうちに、お互い否定せず、みんなの意見を全員が受け入れてくれるのを感じて、最後の方は発言することを恥ずかしいと思わなくなったんです。次第に単なる発表ではなく熱いディスカッションになっていきました。

T. A.

そうやって、最初は30分で済んでいた時間も、最後は1時間とか1時間半になっていったんです。
実はさっきの「多様性」は僕が出したお題。同期の中で最後だったもので、ネタ切れの結果こんな壮大なお題になってしまったのか、リモートで緊張感がなくなっていたのか……いずれにしても朝から熱かったですよ!今思い出しましたけど、きっかけは、ミュージカル『ヘアスプレー』上演にあたり、黒人女性を演じる主演女優が黒塗りメイクをしない判断をしたのを受け、「そういったテーマをどこまで考えていかなければいけないか」と考えたことでした。集大成感のあるテーマでしたね!(笑)

M. F.

平常時の研修なら、社内の各部署の見学などをしている時期だと思うんですが、その時期にこんなディスカッションをしていたおかげで、同期が本当に腹を割って話せるというか、強力な「横のつながり」が生まれたと思います。
ただ一方で、上司や先輩などと会うことができず、オフィスにも行けず、「会社」を知らないままという不安感はありました。

R. M.

同年代としか話していない分、社会人になった実感がないというかね。

T. A.

春休みの延長みたいな感じはありましたよね。ただその代わりといっては何ですが、自分に充てられる時間は長かったので、家で映画を見たり、ラジオを聞いたり、オンラインゲームしたり、触れておくエンタテインメントの幅を広げておくことができました。

R. M.

私は映画に全く詳しくなかったので、みんなの話についていける程度にはなろう!と、リモート研修中に映画を見まくりました。先輩社員とのオンライン交流会もあったので、そこで「この作品のこういう撮影方法が凄い」という話を聞いたらすぐにNetflixでチェックしたり、「不朽の名作」として話題に上がった作品を片っ端から見たり。

T. A.

僕も映画には全然詳しくなかったのでいろいろ見ました。これから就職活動するのか!?という勢いでしたね(笑)「好きなこと」というよりは、語学で例文を覚えるような気持ちからでした。

M. F.

僕も詳しくないからよくわかる(笑)。言語を覚えるような感じですよね。もちろん、同期の中にはすごく映画に詳しい人もいますけど、実際に話を聞いてみたら「お前もそんなに詳しくないな!」という人もいて。詳しい人とそうでもない人、半々くらいじゃないかと思います。

いよいよ出社スタート!

在の仕事内容は?
周囲のサポートやケアはどう?

T. A.

出社再開後は宣伝管理室に配属になり、宣伝活動で発生したお金の処理や、備品管理などを行っています。部活のマネージャーみたいな仕事ですが、宣伝費全体を見ることができるのが面白いところです。というのは、映画の収益構造は作品によって異なり、宣伝費からその作品の収益構造を知ることもできるんですね。映画ビジネスの全体像を、俯瞰して理解することができるんです。

M. F.

僕は情報システム部で社内のパソコンのトラブル対応や、新しいシステムの導入検討などを行っています。今だと、テレワークに対応するためにどんなシステムにするかといったことなども、担当範囲に入ってきます。理系とはいえITについては専門外で、日々勉強ですね。

R. M.

私はシアタークリエに配属になり、日々お客様をお迎えする仕事をしています。お客様に近いだけに、コロナ禍の影響を直に感じる部署といえるかもしれません。実際に劇場にお越しくださったお客様から感染リスクを気にされるお声を頂くこともあります。でも裏を返してみれば、「それでも観に来たいお客様がいるのだ」ということ。生の演劇に触れて感動のあまり泣いている方もいて、劇場でしか味わえない感情があることを日々実感しています。
とはいえ、思ったようにはお客様が戻ってきていないのも事実で、そんな中どうすればお客様が以前のように、コロナを気にせずに楽しめるだろうかと考えることにやりがいを感じています。

T. A.

演劇には固定のファンが多いイメージだから、劇場が再開したらお客様もドッと戻ってくるのだと思っていたんだけど、そうでもないんだね。

M. F.

僕はつい先日、R. M.さんにチケットを取ってもらって観劇に行ったんですよ。今年は研修期間で観劇をすることができなかったので、自分で見ておこうと思ったんです。これまで演劇を観る習慣はなかったんですけど、劇場で、ファンの皆さんの「演劇を求めていた」という空気を肌で感じることができたのはとてもよい経験でした。

R. M.

実際配属されてひしひしと感じているのは、シアタークリエでお客様のご案内をしているアルバイトの皆さんの素晴らしさです。お客様の気持ちを汲み取り、どうすればもっと温かく接することができるかを常に考えていらっしゃって、終演後のお客様アンケートにも、作品の内容に加えて「案内のお姉さんが優しかった」と書かれているものがあるくらいなんですよ。
また、そういう先輩方は私のような若手のいいところを見つける力も高く、失敗して落ち込んでいるときにも上手に励ましてくれて、本当に助けられています。女性が多いので女子校みたいな雰囲気も楽しい!リモート勤務にはなかった経験ですね。

M. F.

僕も、社内で皆さんが使っているパソコンに触ることが仕事なので、今は基本出社しています。トラブル対応をしていると、いろんな部署から呼ばれます。呼ばれる=トラブルなので、基本的には呼ばれないのがベストではあるのですが(笑)、それでも呼ばれることで社内のいろいろな部署を知り、会社の雰囲気がつかめるのがいいところです。リモートでお会いしたことがある人でも、実際に会ってみると雰囲気が違うこともありますしね。

T. A.

「こんな大きい人だったんだ!」とかね。

R. M.

わかる!

M. F.

自分のように出社して仕事をしている者もいるのですが、一方で、この状況下でテレワーク環境を整えることも重要です。そこで部としては、本格的なテレワーク対応に向けて知恵を絞っています。たとえば、コロナ以降は会社から全員にスマホを配付し、従来使用していた大きくて重いPCを持ち歩かなくてよいよう、PCも小さなものを支給していますが、こうした機器に、公開前の作品情報など機密情報が詰まっているのが映画会社。どう紛失を防ぐか、セキュリティをどうするかといったことも含め、いろいろな人がいろいろなことを考えて動いているのを実感しています。自分自身がテレワーク中に支えてもらったように、社内のインフラとして重要な役割を担っているのを感じますね。
あと小さいことですが、分からないことがあったとき、隣にいる上司に「一瞬いいですか?」と聞けるのは助かります。

T. A.

宣伝管理室も3人の小さな部署なので、分からないことはすぐ聞いちゃいます。そして、一つ聞くと、それに関連することまでいろいろ教えてもらえるのがありがたい。分からないことだらけの中でもやっていけるのはそのおかげですね。
コロナ対応による想定外の事態というのもあって、たとえば取材対応時にアクリル板を購入したいんだけどこれって何費になるの?といったようなこともあります。変化が多くマニュアル化の難しい仕事ですが、経験豊富な上長がどっしり構えてくれている分、安心して学びながら経験を積むことができています。

Withコロナ時代のエンタテインメント

たちに何ができるのか。

R. M.

ここまでの話にも出ていましたが、演劇には固定ファンがいて、そういう人たちが見に来てくれるからよい、という暗黙のイメージが上演する側にもあったのではないかと思います。でも、その方たちがコロナで来てくれなくなったら、途端に心もとなくなる。そうならないように、やはりファン層を広げる試みも大切だと改めて思います。
幸い、7月に演劇配信企画『TOHO MUSICAL LAB.』で配信した作品は若い人も見てくれていました。と同時に、配信であれば、感染が心配で劇場に来られない演劇ファンも観ることができます。今後の演劇にまだまだ可能性があると感じています。
私自身も、劇場の仕事についてはまだまだ覚えるべきことが多く、目の前のお客様対応で必死ですが、デジタル面では若い自分が中心になって変えられることもあるかもしれないと思っています。たとえば、スタッフ同士の連絡は今まで全部メールだったのを、チャットツールを有効活用しようと提案してみました。

M. F.

それってR. M.さんがやったの?すごいね!

R. M.

劇場って、今まで上手く行っていた運用を変えづらいところがあるんですが、私のような新人社員にもできることはあるんですよね。変えてよいところはどんどん変えていければと思っています。
あとは、「皆さんが気持ちいい」環境をどうやって作っていくのか。今はベテランスタッフの力を借りながら、よい形を探している状態です。それでも、終演後にはお客様に「おかげさまで楽しく観られました」と感謝されることが多く涙が出ます。演劇はやはり、楽しく観られるのが一番。チケット代が決して安くない娯楽ですし、その感覚は大切にしていきたいですね。

M. F.

新しいものを取り入れることへの抵抗は、どこにでもありますよね。でも、新しいものを導入する側の立場としては、コロナ禍の今はチャンスだとも思うんです。今まで「お金もかかるし」とやらずにいたことを、やってみる機会にもなります。
僕自身は、打撃を受けたとき、守りに入るのではなく、新しいことをしていくのが好きなんだと思います。コロナ禍から立ち直ったときにも、「元通り」ではなくて、螺旋階段のように、少しずつレベルが上っていてほしいと思う。長く会社にいると動きにくくなることもあると思うのですが、
だからこそ、コロナの影響を受けた中で入社した自分たちが「変えていく」という思いを持ち続けたいと思っています。なにせ今年入社したのは自分たちだけなんですから。今後、映画の現場に携わるようになっても、一歩踏み出す気持ちを忘れずにいたいと思っています。

T. A.

管理の仕事は、「ハンコが」とか「名義が」とかでアナログな部分が多く、まだまだ変えづらい部分もあるのですが、そういうところも何とかしていきたいですね!
また、今の宣伝って、基本的に劇場に来てもらうための宣伝だと思うんです。でも、ステイホーム期間に「おうちエンタメ」として動画配信を楽しんでいた人は多いですよね。余暇の選択肢って多いものなんだな、と思ったし、そう考えると、宣伝についてももっとリサーチを重ね、幅広い方向を目指さなければならないのではないかと思います。

M. F.

今後はますますどう変わっていくのか分からない世の中になっていくと思うんですよね。だから、これから就活に取り組む人は、今まで以上に自分と向き合って、自分の価値観を明確にし、それによってどう社会を変えていきたいかということを明示していくことが大事だと思っています。そのためにも就活生には、自分で考える時間を大切にしてほしいですね。

R. M.

就活って、自分を見つめ直すのに最高の機会。自分はこれまでどう生きてきたのか、これから何をしたいのか……適当に活動するのではなく、真剣に考えることを私もお勧めします。手を抜かず、でも楽しみつつ。考えてみたら、いろんな企業が中を見せてくれて、内部事情を教えてくれるなんて、就活のときくらいしかないんですから、楽しまない手はありませんよ!
エンタメ業界が不安という人もいるかもしれませんが、私たちはみんなむしろこれから何ができるかと楽しみにしています。コロナが原因で諦めるなんてもったいないと思います。

T. A.

このままコロナ禍が続けば、就職活動と言っても人と会うのは難しいかもしれません。でも会えないから、情報が少ないから、といたずらに不安になる必要はありません。
大切なのは自信を持って臨むこと。僕自身も、選考の途中で東宝の人事の方に「顔つきが変わってきた」と言われたタイミングがありました。人間、自信を持つと変わるみたいです。僕の場合、自信が生まれたのは、学生時代の経験や、そこから考えた「やりたいこと」を明確にできたことがきっかけでした。
だから、エントリーするときは不安でも、受けると決めたら自信だけは持ってください!そうすれば、必ず誰かが見てくれています。